Archive for the ‘公的価格・地価動向’ Category
2020年都道府県地価調査について
9月29日、国土交通省は2020年都道府県地価調査(基準地価)結果を発表しました。新型コロナウィルス感染症蔓延の影響で、全国平均(全用途)の変動率が前年比-0.6%の下落、商業地は-0.3%、住宅地は-0.7%となりました。
インバウンド需要により地価上昇が続いていた地域の下落が目立ち、入国制限による訪日客の減少や外出自粛による商業施設の収益力低下が地価を下落させる大きな要因となりました。
三大都市圏は、住宅地は全てマイナス、商業地は伸びは鈍化したものの東京、大阪ではプラスを維持、名古屋は8年ぶりに下落しました。
コロナ禍にあって最も上昇が大きかったのは、沖縄県宮古島の+30%強、一方、下落幅が最大だったのは、岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷で-9.3%となりました。
今後の地価予想としては、新型コロナウィルス感染症の影響が沈静化し、経済の先行きがある程度見通せる段階になるまで本格的な地価の回復は難しいと思料されます。
馬毛島の不動産鑑定評価
自衛隊基地建設候補地として国が購入した馬毛島ですが、9月11日、固定資産税の評価基準となる標準地の鑑定評価が実施されました。既に固定資産税の評価替えの鑑定評価作業は終了してるところが殆どだと思いますが、今回はかなりぎりぎりの調査だと思います。
調査は不動産鑑定士2人と市の税務課・財産管理課の職員8人にて実施、民有地2地点、公有地(旧馬毛島小中学校跡地)1地点の調査を行ったそうです。通常、公的評価は地価公示のみ1地点につき2人の不動産鑑定士が鑑定評価を実施しますが、今回の馬毛島の固定資産標準地評価は2名での調査、慎重に行う必要があったからでしょうか。
ちなみに気になる鑑定評価額ですが、自衛隊用地は官地ですので非課税となりますが、民地の変動率はどうなるでしょうか?固定資産税の税額に影響する変動率、とても興味深いところです。
地価動向報告の結果
国土交通省は8月21日、主要都市の地価動向(令和2年4月1日~令和2年7月1日)を調査した地価動向報告を発表しました。全国主要都市の高度利用地帯100地区のうち、1地区を除いて横ばい又は下落となりました。特に三大都市圏の下落が目立ち、名古屋圏は対象9地区全てが下落となりました。
主な要因として、
・新型コロナウイルス感染症の影響により、需要者の様子見など取引の停滞が広がるとともに、ホテルや店舗を中心に収益性低下への懸念から需要の減退が一部では見られる。
・リーマンショック時の地価下落の主因となった、マンションやオフィスの需給バランスに大きな変化は見られていない。
があげられます。
尚、国土交通省は、新型コロナウイルス感染症の状況は先行き不透明で
あり、引き続き地価への影響を注視していくとの見解です。
令和2年相続税路線価と新型コロナウィルス感染症の影響
7月1日に国税庁から発表された相続税路線価は、土地に関する相続税・贈与税の課税の基準となるもので、実勢価格(時価)の80%と言われています。
その路線価ですが、全国平均で上昇しており、特に都市部やリゾート地などでは大幅な上昇となりました。但し、その価格時点は1月1日時点となっており、今回の新型コロナウィルス感染症蔓延の影響がない時点の価格となっています。
従って、今年、土地の相続が発生した場合、どのように新型コロナウィルス感染症による減価を反映させるかが問題となります。国税庁は、地価下落が発生した場合は便宜を図る方向で検討しているそうです。
但し、前記のとおり相続税路線価は、実勢価格(時価)から20%引いた価格となっており、20%を超える減価が発生する可能性があるかは不明ですが、注視する必要はあると思います。
不動産の価格は1物4価
今月1日、相続税の路線価が発表されましたが、この路線価より試算される相続税評価額を含めて、不動産の価格は1物4価と言われることがあります。
まず、代表的な不動産の価格として、毎年1月1日時点を基準とする地価公示価格(国土交通省)及び毎年7月1日時点の地価調査価格(都道府県)があります。この地価公示及び地価調査価格は、概ね実勢価格(時価)を表しており、取引等の指標として使われることが多いです。
次に、固定資産税路線価より試算される固定資産税評価額があります。この価格は、固定資産税等の徴収のもととなる価格で、3年に1回評価替えを実施しています。
最後に、実際の市場で取引される価格、実勢価格があります。この価格は市場価格、時価などともいわれ、上記で述べた公的価格を求める際の基礎となる価格でもあります。
不動産の価格は、相続税、固定資産税の徴収及び取引の指標など目的によって使用する価格は違っており、馴染みのない方には少し分かりにくいかもしれません。
新型コロナウィルス蔓延による不動産価格への影響
現在、少し落ち着いてきた感はありますが、今回の新型コロナウィルス蔓延の経済への影響は甚大なものがありました。特に、営業自粛を余儀なくされた商業店舗の売り上げ減の影響は大きく、廃業若しくは賃料の値下げ要求が相次いだとの声も聞きました。
一方、住宅地ですが先行きの不透明感から取引自体減っており、特に一時取得者層の給与等、購入及び返済資金の見通しが立たないケースが多く、買い控えが起きているようです。
今後の不動産価格ですが、新型コロナウィルス蔓延の第二波の規模にもよると思いますが、第一波のような大規模な営業自粛が要請されるような事態になれば、商業地の価格は大きく下落することが予想されます。また、金融機関の融資姿勢は厳しくなることが予想され、体力のなくなった企業が人減らしに走るような事態になった場合、住宅地の価格も下がるものと予想されます。
これらは全て私の予想ですが、経済情勢と密接に結びついている不動産の価格、予断を許さない状況であることは間違いなさそうです。
東京都心の地価に思うこと
今回の新型コロナウィルス蔓延の影響及びそれに伴う東京オリンピックの延期、中止の可能性により東京都心の地価の先が読めない状況です。
先日、経済評論家の森永卓郎氏が書かれた東京都心の地価についての記事を読みました。東京都心の地価は、東京オリンピックの前に大暴落を起こすとの予想です。森永氏は、収益性の観点から都心の地価はバブルだ、とのお考えのようです。
バブル経済崩壊の言葉のもととなった「バブル」とは、日本語で「泡」、実態無く膨らんだものが、最後弾けて終わったという意味で的を得た表現だったと思います。
森永氏はインカムゲインとキャピタルゲインの言葉を使って説明しておられましたが、記事で興味深かったのは、
1.今回国税庁から発表された相続税路線価の最高価格地、銀座5丁目ですが、約坪1億5154万円、バブルのピークだった1992年が坪1億2045万円、地価はバブル期を超えている。
2.東京都心の物件は、表面利回りが3%を下回っているものが沢山あるが、5%の利回りを確保しておきたい。
特に2.ですが、表面利回りが3%ということは、実質利回りは当然それ以下になりますから、物件によっては収支がマイナスになってしまいます。それでも買い手が付くということは、地価の上昇、すなわちキャピタルゲインを狙っての不動産投資となってしまい、地価が下落に転じた時、前回のバブル崩壊と同じ結果となってしまいます。
実際、将来の地価動向は誰にもわかりませんが、バブル崩壊の過去を参考に、慎重に不動産の動向を見極めることが必要になると思います。
2020年相続税路線価
今月1日、国税庁は2020年分の相続税路線価を発表しました。
あまり知られていませんが、地価公示、都道府県地価調査とともに、相続税路線価決定の元となる標準地の鑑定評価は、私たち不動産鑑定士が行っています。
今回の全国平均は前年比+1.6%で5年連続上昇し、特に訪日外国人によるインバウンド需要に沸く都市部や、北海道、沖縄県などのリゾート地を有する地域の大幅な上昇が見られました。
県庁所在地別でみると、那覇市は+40.8%、大阪市が+35.0%、横浜市が+34.5%、都道府県別ではやはり沖縄県が+10.5%で3年連続トップ、東京都が+5.0%、宮城県と福岡県が4.8%となりました。最高価格地は、東京・銀座の鳩居堂前の4592万円/㎡で35年連続トップ、トップ10に大阪の地点が6地点入ったことも今回の特徴です。
名古屋ですが、価格は名古屋駅前の「名駅通り」1248万円/㎡で16年連続トップ、上昇率は西区広井町線通りが+14.4%となりました。
路線価は、1月1日時点の価格であり、インバウンド需要等による好景気の影響を受けた結果となりましたが、その後の新型コロナウィルス蔓延の影響は反映されておらず、今後の地価にどの程度の影響を及ぼすか懸念されるところです。
平成30年地価調査について
先週の18日、国土交通省は平成30年基準地価を発表しました。住宅地、商業地、工業地などを合わせた全用途の全国平均が前年(0・3%下落)より0・1%上がり、1991年以来27年ぶりに上昇に転じました。インバウンドによる訪日客の増加や再開発による利便性等の向上が理由と考えられます。
このような訪日客を受け入れるホテル建築ラッシュが都市部で続いていますが、札幌、仙台、広島、福岡の4市の商業地は9.2%上昇しました。観光地としての魅力に加えて、まだ価格に割安感があり、伸びしろが大きいこともあるのではないでしょうか。
私が住んでいる愛知県名古屋市でも、今年は上昇率1位地点が名古屋駅地区から栄地区(「中(県)5-12」(錦2丁目))になりました。回遊性のある商業地域としての魅力と伸びしろに加えて、買い物以外に楽しむスポットが多いことも訪日客に好まれたのではと思います。
名駅地区と栄地区の今後ですが、リニア新幹線効果や再開発が進む名駅地区が優位だと考えられます。
ですが、栄地区において圧倒的な訪日客を呼び込む施設建築や施策などを打ち出した場合、最高価格地点が逆転する可能性は残されているのではと思います。
2014年路線価
少し前の話ですが、相続税・贈与税などの算定の基準となる路線価が国税庁より発表されました。
前年も上昇した愛知県と宮城県に加え、東京、大阪、神奈川、千葉、埼玉、福島の1都道府県で上昇に転じました。
愛知県については、好調な自動車産業、宮城県、福島県は復興需要によることが理由と考えられます。
愛知県については、上昇地点があったのは名古屋市内と春日井市の1地点、春日井市の上昇地点はJR勝川駅前の再開発による大型マンション建設ラッシュが理由だそうです。
名古屋市内、特に、名駅地区と栄地区については、名駅でオフィスビル建築が続く中、栄地区はマンションの建設が進んでおり、特に栄え4,5丁目では福祉介護サービス付きマンションが増えているようです。ここ数年、栄地区に限らず、名駅地区以外のオフィス地区(丸の内・伏見・千種など)においては、商業地域から住商混在地域になりつつある傾向が見られます。
このような都心回帰の動きは、好景気が続く間見られると思います。
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