Archive for the ‘不動産の権利’ Category

景観権のお話

2023-02-27

街の景観、特に品等のよい住宅地域では敷地の規模や建築物の用途、高さなどを条例や地区計画で定めることで、美しい街並みを守る努力がなされています。

最近、地価の高騰に従い、画地を小さく割った戸建住宅、いわゆる狭小戸建住宅が増えています。そのような狭小戸建住宅の建設計画の話が出ると、古くからの住民の方から反対運動が起きることがあると聞いたことがあります。

先日、別荘地として名高い長野県軽井沢町で、住民が大型ホテル建設計画の規模縮小を求めるとの記事を見ました。求める変更の内容は、建物を周囲に調和させ、3階建てを2階建てに変更することだそうです。

景観権は眺望権と同じく、権利として認められる可能性は低いですが、景観の悪化による不動産価格の下落を懸念しているようです。

観光地にふさわしくない建物の建築は避けるべきだと思いますが、購入した土地の開発に制約を掛けられる不動産業者の想いも考慮すべきだと思います。

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眺望権は主張できる?

2023-02-10

首都圏をはじめ、都市圏や最近では地方中核都市でも見られるようになったタワーマンション、そのタワーマンションの最大の売りは高層階からの眺望だと思います。

タワーマンションの高層階は遮るものがないことから階下の眺望を楽しみことができ、方位よりも眺望のよい部屋の価格が高いそうです。

このタワーマンションの眺望ですが、建築が完成し入居後に、周辺にさらに高いタワーマンションが建設されてしまい、眺望が失われてしまった、との記事を見ました。眺望を楽しみに高額なマンションを購入したにも関わらず、今まで通りの眺望が楽しめない・・、やりきれない気持ちになると思います。

このように眺望が失われた場合、眺望権を主張できるかか問題になりますが、やはり認められる可能性は低いそうです。眺望がなくて通常の生活は営めるということでしょうか。

同じような権利に日照権がありますが、こちらも主張は中々難しく、日照を遮った建物が違法建築物などでない以外は認められることは無いようです。

現在も増えつつあるタワーマンション、今後、同じようなケースが増えていくものと思われます。

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東京ドームの命名権の価格

2020-12-22

命名権(ネーミングライツ)の販売は、大規模なスタジアムではかなり行われており、プロ野球やJリーグの本拠地スタジアムの名称が変わるケースが増えています。

特に、パリーグの球団は、既に6球団中5球団が導入しており、積極経営により獲得した資金をチームの強化に充てているようです。ちなみにセリーグは広島カープの本拠地球場のみ導入(中日ドラゴンズも来シーズンから導入)、このような姿勢が日本シリーズの結果に表れているのかもしれません。

先日、東京読売ジャイアンツの本拠地、東京ドームの命名権の記事を見ました。具体的に決まった話ではなく、あくまでも仮定の話ですが、売り出せば10年100億円の契約の可能性がある、との内容でした。やはり東京ドーム、巨人の本拠地であるだけではなくイベントやコンサートで使用されることが多く、その価値に見合う宣伝効果があるのでしょう。

プロ野球の本拠地球場の命名権、パリーグを見習いセリーグでも導入が進んでいくと思われます。

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旧大沼百貨店の価格

2020-10-11

競売の売却基準価額は不動産鑑定士鑑定評価額をもとに決められていますが、先日、1月に自己破産手続きに入った山形市の旧大沼百貨店の売却基準価額が発表されました。

売却基準価額は、旧本店が2億3346万円、新庄市の旧ギフトショップが1944万円だそうです。

地方都市の人口減少が進み、新たな出店者の想定が難しい中、入札者が現れるか、また、いくらで落札されるか興味深いです。

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隣地の建物と鑑定評価

2020-09-17

既に建物が建っている市街地では、隣地が空き地であることもありますが、通常は何等かの建物が建っているものです。用途地域が住居系の住宅地域の場合、建蔽率や容積率、建物の高さの制限などがありますから隣地の建物の存在で著しく日照や通風が害されるケースは少ないと思います。

以前、北垂れの北側の土地建物を買った方から、空き地だった南側に家が建ってしまい1階の室内が真っ暗になってしまった、との話を聞いたことがありますが、隣地が空き地の不動産を買う場合は注意が必要です。

商業系地域の場合、隣地に高層の建物が建つ場合があり、日照や通風が阻害されるケースがよくあります。今まだ享受していた眺望も得られなくなし、私も日照権阻害影響を反映した鑑定評価書を書いたことがあります。

隣地に建物が建つ、また特に商業系用途地域の場合は居住権の方が尊重されるケースは少なく、裁判で隣地の建物の建築制限が認められた話は聞いたことがありませんが、実際はどうなのでしょうか。

最近、このような隣地建物による日照・通風阻害を訴える記事を見ますが、今後、居住者の訴えを認める判決がでるか興味深く見守りたいと思います。

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占有権のついた土地の鑑定評価

2020-08-19

占有権のついた土地の鑑定評価は、その使用権原が無権利であった場合、その占有者に専有物の撤去を請求費用分を控除した価格になるのが一般的な考え方になります。

先日、県道沿いに設置された所有者不明の大鳥居等を、市が強制代執行で撤去するとの記事を見ました。費用は約1100万円、建造物の規模等を考えると高いと思います。

この大鳥居、高さ約12mで確認申請不要であり、1975年の建てられたこと以外は不明、とのことです。県道等の官地に建っているのなら、建築時点に土地使用契約は結ばなかったのでしょうか。大鳥居という特殊な建造物で所有者不明、というのも不思議に感じました。

今回のような公道に鳥居や石柱、石灯篭などが建っているケースがありますが、どのような扱いになっているのでしょうか。一度、調べてみたいと思いました。

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定期借地権付きのマンションの鑑定評価

2020-08-07

マンション(区分所有建物及びその敷地)鑑定評価は、作業量が多く時間のかかることが多いです。そのマンション(区分所有建物及びその敷地)ですが、土地部分の使用権が所有権の共有持ち分である場合と定期借地権である場合があります。当然、所有権の方が強い権利ですし、定期借地権の場合、通常、解約期間の満了時には建物を解体し、更地にして返還することになるので、立地や建物の仕様等の条件が同じである場合、定期借地権付きのマンションの方が鑑定評価額は安いことが多いです。また、通常、区分建物の所有者は地代の支払い義務がある代わりに、固定資産税等の支払いは不要となります。

この定期借地権ですが、マンションの場合は契約期間が長期となることが多いですが、借地権の残存期間が短い場合は、その点を考慮した鑑定評価となります。但し、建物の状態も良く、地主が十分な地代を得ている場合などは、定期借地契約の契約期間が延長される可能性も否定できません。

地価上昇が続く昨今、事業用定期借地権で建てられた店舗など、契約満了時に終了しているケースが多いのですが、将来、契約満了時に経済環境が悪化している場合など、定期借地契約の契約期間が延長されるケースも出てくるのでは、と思います。

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温泉権と不動産価格

2016-06-03

温泉を使用する権利は無料ではなく、それを使用する権利温泉権といいます。なので、大規模な温泉施設などでだくさんの源泉を必要とする場合、高額な金額で温泉権を購入することになります。

今回の熊本地震で、田んぼに温泉が湧いた地域や、お湯が出なくなったり湯量が落ちたりした地域があったそうです。どちらも困りますね。

温泉旅館の鑑定評価の場合、温泉が出なくなれば価値は下がりますが、その減価の一つの考え方として他から温泉を購入することが可能であれば温泉権の価格及び温泉を引き込む設備費用を控除して求められると思います。もちろん集客が落ちれば収益価格も下がるので収益還元法も重視する必要があると思います。

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占有権の価格

2015-06-10

先日,ネットニュースの大阪梅田の地下道における立ち退きの記事が出ていました。内容は,大阪市が阪神百貨店の建て替えに伴う地下道の店舗の立ち退きを求め,そのうちの占有者が拒否しているということです。

大阪市の橋下市長は会見で,「賃貸借契約なら勝手に立ち退きを求め訳にはいかないが,道路占有許可は公益の理由が出た場合は許可できなくなる」と述べています。ちなみに,占有料は近隣の地価相場ぼ9分の1か8分の1だそうです。

この場合,大阪市が占有者立ち退き補償を提示しているかは不明ですが,占有許可に基づく権利は非常に弱いものであり,占有権の価格自体はゼロであると考えます(もちろん立ち退きをスムーズに進めるために,店舗の撤去費用や移転費用の一部+アルファは支払うことが多いと思われますが。)。

特に今回は名物店舗の立ち退きであり,裁判で営業補償などを求められた場合,難しい問題になると思います。判決の経緯を注意深く見守りたいと思います。

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