Archive for the ‘鑑定評価の話’ Category

マイナスの不動産価格の内訳

2020-07-30

以前、越後湯沢のリゾートマンションの鑑定評価額が10万円というブログを書いたことがあります。需要よりも供給、圧倒的に売り圧力が強い市場では、新築購入価格に関わらず10万円という価格になってしまうようです。但し、実際、成約になった場合の価格は10万円以下、0円かもしれません。

先日、ネットで越後湯沢のリゾートマンションの所有者に、マイナス180万円で購入希望、とのダイレクトメールが届いた、との記事を見ました。ちなみにその金額の内訳は、修繕積立金・管理費の2年分(月額5万円)として120万円(滞納していると仮定)、室内の家具・家電類の撤去費用20万円、室内清掃費・設備修繕費20万円、不動産取得税・登録免許税30万円、合計190万円を不動産価格の10万円から控除して180万円だそうです。

このようなリゾートマンション、間取りにもよりますが小規模のものが多く、家具・家電類の撤去費用20万円と室内清掃費・設備修繕費20万円は高いと思います。但し、所有するだけで管理費として年間60万円かかるとすると、単純計算で3年で元はとれることになりますが。

このような買取業者は、主に中国人向けの販売を目的としてるようですが、短期で転売できる当てがあるのでしょうか。もし、これがビジネスとして成立するのであれば、越後湯沢にリゾートマンション価格も10万円よりは上がっていくものと思われます。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

郊外ショッピングモールの隣地の鑑定評価

2020-07-29

休日はショッピングモールで買い物するというスタイルが定着した日本、確かに、愛知県内でもイオンモールをはじめ沢山のショッピングモールができました。

特に区画整理事業地内など、新しい街にはショッピングモールができることが多く、周辺にもおしゃれな店舗などもでき、人気の住宅地域になることが多いです。

このショッピングモール隣のマンションに価値なし、との記事を見ました。このような住宅地域はいずれ人気が廃れて人口が減り、また、ショッピングモールが建つような商業地域は住むのに適さない、というのが理由のようです。確かに、休日は人と車の往来に悩まされることになりそうです。

不動産の鑑定評価を行う際、最有効使用に基づく価格を求めることになります。郊外ショッピングモール隣の土地の最有効使用、駅距離、前面道路、容積率・建蔽率、さらには土地の規模や形状から判断することになりますが、マンションを最有効使用とした場合、将来的なことを考えると需要は弱くなるのかもしれません。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

隣地境界線と鑑定評価額との関係

2020-07-28

建物を建築する場合の、陳地境界線と外壁との距離は民法では50mと定められています。但し、用途地域が第1種低層住居専用地域では、1.0m乃至は1.5m離すよう定められており、良好な住環境は確保されますが、敷地利用率は落ちることになります。なので鑑定評価額収益価格)は低くなります。

先日、ネットで建物西側の敷地に集合住宅が建築中で、隣地境界との距離が91cm~126㎝と近接している、との記事を見ました。建築中の建物は木造であり、耐火建築物ではないため隣地境界から離した設計にしたと思われます。

今回のような収益物件の場合、敷地の有効利用率はそのまま収益率に反映することになるので、オーナーは少しでも隣地に近づける形で建物を建てることを考えると思います。隣地境界から平均で約1.1m離して建物を設計しており、隣地所有者への配慮はみられるのでは、と思います。

隣地境界との距離ですが、50cm未満で建物を新築される方もあります。今回のケース、これ以上の設計変更は難しいと思われます。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

特殊な不動産の鑑定評価

2020-07-27

不動産の鑑定評価における収益価格は、更地の場合、最有効使用を前提とした建物を想定し、その不動産から得られる純収益を土地と建物に配分、その土地部分の純収益に還元利回りを考慮して求めることになります(土地建物の純収益から一体の収益価格を求め、その価格から建物価格を控除して求める方法もあります。)。

対象不動産土地建物の場合は、土地建物一体が生み出す純収益から収益価格を求めるので、鑑定評価額も一体の価格になります。

その収益価格ですが、延べ面積に対する賃貸面積の割合が大きいほど収益は多くなりますから、当然、収益価格は高くなることになります。なので、賃貸に出すことを想定しない特殊な建物の場合、収益を生み出さない面積が大きくなりますし、また、借り手も限定されるため収益価格は低くなることが多いです。

先日、東京の三陽商会のビル売却の記事を見ました。売却額は約117億円(簿価50億円+売却益67億円)、広さは100坪強、自社ビル目的で設計されており、階段とエレベーターが複数設置されているそうです。

このような特殊なビルは、やはり需要が限られ市場性は劣ることが多いです。賃貸を想定して自社ビルを設計することはないと思いますが、やはり汎用性のある無難な設計の方が、収益に出す際は有利だと思いました。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

鑑定評価額とオークションの関係

2020-07-26

最近、官庁や自治体によるオークション公売が盛んです。最も、財務省は物納などによる不動産を公売、法務省は破産財産を競売しており、共にオークションと同じ理屈で価格が決定しています。

不動産の鑑定評価は、最有効使用(不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。)を前提に価格が決定されており、こちらもオークションと同じく最も高い価格をもって鑑定評価額となります。

不動産の鑑定評価もオークションも、どんなに価値があっても需要がない又は少ないものは価格が安く、逆に需要があるものは価格も高くなるという市場の原理に合致した方法であることは間違いなさそうです。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

豊洲用地訴訟の鑑定評価額

2020-07-24

先日、東京都豊洲移転用地訴訟の東京地裁判決がでました。結果は、割高購入は認定したものの、土地の取得は不合理ではなく、住民敗訴でした。

今回、東京都の購入費(取得価格)が約578億円、裁判官は、正常価格は購入費から土壌汚染対策費を引いた額、取得価格は134億円高かったと認定しました。正常価格は約444億円、但し、取得価格との差額が3割程度なので不当な高値ではない、という判断のようです。

不動産の鑑定評価額の高値上限は3割程度まで、という指標と示した今回の判決、今後の用地買収における鑑定評価に影響を与えそうです。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

埋蔵文化財の埋まっている土地の鑑定評価

2020-07-23

土地鑑定評価を行う場合、遺跡など埋蔵文化財が埋まっているか否かの地歴調査を行いますが、不動産鑑定士の調査では実際に試掘するわけではなく、市町村の教育委員会などが持っている遺跡マップにて調べることになります。

私も、過去何度かこのような鑑定評価に遭遇したことがありますが、対象地や隣接地、周辺などで試掘・本掘の記録があるか、又は実際に土器などが発見されたかなどを調査しすることになります。

少し前ですが、長崎県の県庁跡地の発掘調査で石垣群が姿を現したそうです。県庁跡地ですので、おそらく事業主体は長崎県だったと思いますが、もし、民間の事業者だった場合、本掘費用は事業者負担になるので大変な負担になります。私が学生だった頃、読売新聞中部本社の社屋で織田家の遺跡が発見され、社屋の建て直しにお金と時間が掛かったと聞いたことがあります。

埋蔵文化財、遺跡として残すことも大切ですが、事業者の負担も軽くする制度を検討すべきだと思いました。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

容積率の緩和のお話

2020-07-21

容積率とは、敷地面積に対する建築延べ面積(延べ床)の割合のことをいい、建蔽率とともに建築可能な建物の規模を規定するものとなります。この容積率は、不動産の鑑定評価土地価格を求める際、大きな決定要因となります。

最近、容積率緩和の話を目にすることがおおくなりました。名古屋市ですと名駅や栄地区などで高級ホテル等を誘致するため、京都では大規模マンション建設のため、また、最近多発している水害対策の施設整備を目的とするために容積率を緩和する、又は緩和の検討中とのことです。

容積率は、道路等の公共施設の能力に対応した機能の維持と増進を図ることを目的としており、既に既存の容積率を前提に建物建築を行った事業者との公平性を図るためにも、安易な容積率の緩和は認められるべきではないと思います。

都市の活性化も重要だと思いますが、美しい街並みを守るためにも容積率の緩和は慎重な検討の上行って欲しいと思います。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

瑕疵物件の鑑定評価額

2020-07-20

不動産の瑕疵物件(自殺、殺人事件、孤独死等があった不動産)の鑑定評価を行う場合があります。このような忌み物件は、通常、市場性が落ちることから減価することになりますが、減価額が問題となります。

一般的に、人の死があった物件が該当することになりますが、その程度、残忍な殺人事件があれば通常買い手はつかず、建物は取り壊し、土地も相当に減価が生ずることになります。最近増えている孤独死ですが、遺体の損傷が激しいなどの事情がなければ減価なし、又は故人の生活の面影を完全に消す程度のリフォーム代+αの減価になると考えられます。

私も過去、瑕疵物件に遭遇したことがありますが、あるマンションで事故死と自殺、親子で二人死亡した不動産がありました。売買目的でしたが、後で聞いたところ、買い手があったそうです。価格は事故物件にしては若干高めに感じました。

このような事故物件の鑑定評価、心理的に辛く、故人のご冥福を祈りながら評価しています。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

不動産鑑定評価の積算価格

2020-07-19

不動産の鑑定評価を行う際もとめる不動産の価格には、主に、積算価格(原価法:不動産の再調達原価より価格を求める方法)、比準価格(取引事例比較法:不動産の市場性に着目して価格を求める方法)、収益価格(収益還元法:不動産の収益性に着目して価格を求める方法)があります。

その中でも積算価格は、不動産の再調達原価、すなわち費用性に着目して価格を求める方法であり、対象不動産土地建物である場合、必ず試算する重要な手法になります。

昨日、投資判断に基準で積算価格も重視してみえる投資家の方について書きました。この方は、土地は路線価から求め、総額から先に求めた土地価格を控除して建物価格を求めていると思います。但し、都心の商業地などでは路線価が地価の上昇に追い付いていない、また、地方などでは路線価が地価の下落に追い付いていない場合があり、必ずしも路線価が実勢価格を反映していないことに注意は必要だと感じました。

このような配分法(総額から土地又は建物価格を控除して価格を求める方法)は、私も利回りを求める場合などで多用していますが、土地価格は周辺取引事例価格、建物価格は構造、経過年数などから妥当であるかの検証を加えています。

路線価は一般的に、実勢価格の8掛けと言われており、相場価格を調べる際にはとても便利なものですが、投資物件など高額な取引の場合、求められた価格を慎重に判断することが必要だと思います。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」

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