Archive for the ‘鑑定評価の話’ Category
絵画の鑑定評価額
骨董品や絵画は価値の判定が難しく、不動産と同様、骨董品は専門の鑑定士の方が価値を判定することになります。最も、骨董品や絵画の価値が問題となるのは、売買よりも遺産相続の際だと思われます。
相続税の申告の際は、骨董品や絵画も申告額の基となる価値を求めることになりますが、ほとんどの相続人は適正な価値を判定することは難しいと思います。
ちなみに骨董品や絵画の評価は、精通者意見価格というプロの鑑定士が査定した価格をもとに相続税の計算を行うそうです。なので特殊な不動産の場合のように、鑑定評価書とセットで申告することになります。
日本の不動産鑑定士は、不動産の価値を判定する仕事ですが、韓国のように鑑定士として不動産以外の動産の評価もできるようになれば、仕事の幅が広がるかもしれません。
地盤と鑑定評価の関係
不動産の価格形成要因として、地勢と地盤は重要であり、特に地盤が弱いと建物が傾いたり、表層改良にお金がかかることから鑑定評価額は低くなります。
一方、地盤調査は地下の目に見えないところを調べることになるので、本格的なボーリング調査やスウェーデン式のような簡易な調査を利用することが望ましいですが、鑑定評価の場合、費用の関係から省略することが多いです。鑑定評価では地歴調査は行う必要があるので、過去地図や地形図、閉鎖登記簿や地盤図などを使って調べることになります。
先日発生した調布市の道路陥没、周辺の地価への影響を心配する声がありますが、鑑定評価を行う場合、市場性減価が考慮されるかは難しい判断になると思います。
愛知県でも少し前、日進市の竹の山で開発された住宅団地で陥没がありましたが、現在は住宅地域として発展しています。
但し、愛知県の春日井市、長久手市、日進市などでは亜炭鉱の跡地が多くあり、不動産の鑑定評価を行う場合、地盤については慎重な調査が求められます。
越境のある土地の不動産鑑定評価
不動産の鑑定評価を行う場合、対象となる不動産の確定を行う必要があり、位置や面積、権利の内容を確定します。その際、越境の有無を調査することになりますが、確定測量がされておらず、境界杭が確認できない土地の鑑定評価の場合は注意が必要です。
枝木や構築物等、地上部分の越境は、目視で把握することがありますが、地下の越境については聴き取りや地歴調査から判断するしかないと思います。
また、がけ地を含む鑑定評価を行う場合、擁壁の越境が問題となることがあります。隣地所有者が対象地に擁壁を設置し、越境となっているケースがあります。このような場合、聴き取り調査、境界杭の確認、確認できない場合はスケールで慎重に境界を推定し擁壁の設置場所を確定し越境の有無を把握することが必要です。
丘陵地に位置する土地を鑑定評価する場合、がけ地と擁壁を含むケースは意外と多く、慎重な対象不動産の確定が求められます。
1階がコンビニエンスストアのマンションの価格
以前、1階が飲食店などの店舗の鑑定評価額について書きましたが、今朝、1階がコンビニの物件の住み心地記事を見ました。
私は、1階にコンビニエンスストアのマンションに住んだことはありませんが、建物の道路を挟んだ向かいにコンビニの物件に住んだことはあります。夜中にコピーや切手を買いたいときなどとても重宝しました。
マンション不動産の鑑定評価を行う場合、1階にコンビニエンスストアがあっても増加要因にはならず、場合によっては騒音などを理由に減価するかもしれません。但し、今後テレワークの普及などで日中在宅で仕事する人が増えた場合や、コンビニエンスストアのインフラとしての役割が増すようになれば、コンビニエンスストアの存在が不動産の鑑定評価において増加要因になる日が来るかもしれません。
建物鑑定評価における内見調査
建物の鑑定評価を行う場合、屋根や壁などの外観を調べる外観調査とともに建物の内部を調べる内見調査を実施することになります。内見調査は主に室内の老朽化や破損の程度、設備の交換の必要性などを判断するために必要で、原則行うことになっています。
先日、コロナ禍で実際に建物を見ずにオンラインで内見調査を行うとの記事を見ました。ビデオ通話を使用しオンラインで映像と音声にて会話しながら調査を行うそうです。
このオンライン内見は、不動産の売買や賃貸など買い手が物件探しの際に行っている段階ですが、将来的に不動産の鑑定評価でも実地調査の補助的なものとして採用されるかもしれません。
希少なピンクダイヤモンドの価格
以前書いたことがありますが、韓国の鑑定士は不動産の価格だけではなく、船や自動車、美術品や宝石を鑑定評価してもよいそうです。鑑定評価の基本的な考え方は、不動産も他の動産も同じなので日本の不動産鑑定士も不動産以外の動産の評価は可能だと思います。
ネットで、14.83カラットの希少なピンクダイヤモンドがオークションに出品されるとの記事を見ました。予想落札価格は2300万~3800万ドル(約24億~39億円)、桁違いの金額ですね。
もし日本も韓国のように不動産鑑定士が宝石を鑑定評価できるようになった場合、宝石を専門にあつかう鑑定士が出てくるでしょうか?私はごく少数の鑑定士のみ宝石を鑑定評価することになると思います。理由は、日本は欧米や中国のような大富豪の数が少なく、超高額な宝石の需要が少ないと考えるからです。但し、宝石の鑑定評価に精通した日本人の鑑定士が海外で活躍する時代は来ると思います。
不動産鑑定評価と地歴調査
不動産の鑑定評価を行う際、その土地が以前どのような土地であったかを調査することになります。その際、過去の住宅地図や閉鎖登記簿を使用し、過去の航空写真や地形図を使うこともあります。
先日、土地区画整理事業地内の土地の調査を行いました。以前は田を中心とした地域を開発し、大規模な住宅地域ができつつある地域です。
そのような地域はゼンリン地図やWEB地図が以前のままとなっており、場所の特定に苦労するのですが、事業計画図や仮換地図にて場所を特定します。その経緯で分かったのですが、過去の地図を見るとその土地は以前はため池、当然、埋め立ての際、地盤改良されているはずですが。
ため池の開発地は少し前にも遭遇したことがありますが、開発素地の価格が上昇したことも理由と考えられます。地歴調査、不動産の鑑定評価を行う上で欠かせない作業であるとともに、その土地の意外な歴史を知る機会でもあります。
不動産鑑定評価をしてはいけない土地
土地の相続税・贈与税申告の際の評価額は、通常、路線価方式(財産評価基準)に基づいて評価されます。但し、路線価方式による価格が時価(実勢価格を上回っている場合、不動産鑑定士による鑑定評価額での申告が認められる場合があります。
私も鑑定業務の中で、何件か相続税の節税のための鑑定評価をしたことがあります。相続税節税を目的とした鑑定評価は、無道路地であったりがけ地であったり、路線価方式による評価額が明らかに時価を上回っており、取引事例や減価額の試算方法など客観的な理由付けができる場合に受けることにしています。
理由は、相続税路線価は時価の8掛け程度となっており、通常の場合、路線価方式による価格が時価(鑑定評価額)を上回ることはないからです。
先日、ネットである税理士さんが書かれたサイトを見ました。鑑定評価額による相続税申告が否認され、地裁判決でも敗訴したとの内容でした。推測される理由は、鑑定評価額を低めに出すため無理な評価をした場合などが該当します。この裁判の敗訴の理由ですが、1土地:採用した取引事例4件が著しく安い価格である、2土地:1事例は売り急ぎ事例である、とのことでした。明らかに評価に無理があったと考えられます。
このHPの中に、そもそも「不動産鑑定評価をしてはいけない土地」と書かれていました。否認された鑑定評価書が敗訴した理由は、内容ではなく不動産鑑定評価をしてはいけない土地で、内容が完璧であっても敗訴であったと。最も、この判決から推測するに、内容が完璧(この案件では少なくとも適正な事例の選択)であれば、鑑定評価額が路線価方式の価格を上回り、依頼者にとって意味のない鑑定評価になっていたと思います。
この税理士さん書かれた意図の詳細は不明ですが、私は不動産の鑑定評価ができない土地はなく、依頼目的(相続税申告)から不動産鑑定士が鑑定評価の依頼を受けてはいけない土地、と理解しました。
強盗に入られたタワーマンションの価格
東京都心部や湾岸エリアを中心に急激に増えたタワーマンション、その価格は中古でも1億円を超える物件もあります。そのタワーマンションで先日、女優さんが強盗に入られ現金600万円を奪われる事件がありました。
有名人の自宅に強盗が入られて事件ということで、スポーツ紙やワイドショーで報道されたこともあり、このマンションは多くの人に特定されることになりました。プライベートを明かさないことが多い芸能人、強盗被害に加えての災難となりました。
このタワーマンションの1室を鑑定評価するとなった場合、今回の強盗事件が減価要因となるか問題になるかもしれません。ちなみに同マンションの住民の方は、イメージ悪化を心配しているとのことです。
私がこのマンションの1室を鑑定評価するとした場合、事件のあった部屋はもちろん他の部屋も減価しないで鑑定評価すると思います。この女優さんは、犯人ともみ合った際軽傷を負ったそうですが、減価を要するほどの大事件ではありませんし、買い手は購入を敬遠する理由にはならないと考えるからです。
他の不動産鑑定士ならどのように評価するでしょうか?減価するかしないか、興味深いです。
サンフランシスコの超高層ビルが680億円で売却
不動産鑑定士は不動産の価格を決めることが仕事で、対象となる不動産は高額な不動産もあれば低廉な不動産の場合もあります。今回ネットで見た不動産は超高層ビル、話ではサンフランシスコのランドマーク的な存在のビルだそうです。
この超高層ビルが売却された価格は680億円、天文学的な数字ですね。ちなみにこのビルは今年2月に約743億円で売却されるとの報でしたが、新型コロナウィルス感染症の影響で値引きされた売却価格に決まったそうです。
私はこのような超高額な不動産の鑑定評価をすることはないと思いますが、日本でも取引のある超高額な不動産、実際に鑑定評価をやられた不動産鑑定士の感想を是非聞いてみたいと思います。
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