不動産鑑定評価をしてはいけない土地

2020-11-05

土地の相続税・贈与税申告の際の評価額は、通常、路線価方式(財産評価基準)に基づいて評価されます。但し、路線価方式による価格が時価(実勢価格を上回っている場合、不動産鑑定士による鑑定評価額での申告が認められる場合があります。

私も鑑定業務の中で、何件か相続税の節税のための鑑定評価をしたことがあります。相続税節税を目的とした鑑定評価は、無道路地であったりがけ地であったり、路線価方式による評価額が明らかに時価を上回っており、取引事例や減価額の試算方法など客観的な理由付けができる場合に受けることにしています。

理由は、相続税路線価は時価の8掛け程度となっており、通常の場合、路線価方式による価格が時価鑑定評価額)を上回ることはないからです。

先日、ネットである税理士さんが書かれたサイトを見ました。鑑定評価額による相続税申告が否認され、地裁判決でも敗訴したとの内容でした。推測される理由は、鑑定評価額を低めに出すため無理な評価をした場合などが該当します。この裁判の敗訴の理由ですが、1土地:採用した取引事例4件が著しく安い価格である、2土地:1事例は売り急ぎ事例である、とのことでした。明らかに評価に無理があったと考えられます。

このHPの中に、そもそも「不動産鑑定評価をしてはいけない土地」と書かれていました。否認された鑑定評価書が敗訴した理由は、内容ではなく不動産鑑定評価をしてはいけない土地で、内容が完璧であっても敗訴であったと。最も、この判決から推測するに、内容が完璧(この案件では少なくとも適正な事例の選択)であれば、鑑定評価額が路線価方式の価格を上回り、依頼者にとって意味のない鑑定評価になっていたと思います。

この税理士さん書かれた意図の詳細は不明ですが、私は不動産の鑑定評価ができない土地はなく、依頼目的(相続税申告)から不動産鑑定士鑑定評価の依頼を受けてはいけない土地、と理解しました。

愛知県・名古屋市の不動産鑑定士「松岡不動産鑑定士事務所」