Archive for the ‘鑑定評価の話’ Category
建物の間取りと鑑定評価額
戸建住宅などの建物の鑑定評価をする際、築年数、構造や使用、設備に加えて建物の老朽化・陳腐化などを考慮して価格を決定することになりますが、間取りに関しては、特に特殊な場合以外、価格形成に影響しないと考えられます。
先日、細く区切った間取りのマンションは売れにくい、との記事を見ました。昔の家族は子供が多く、それぞれ独立した子供部屋を確保する必要から狭い部屋が多くなったようです。このような鑑定評価の場合でも、特に減価が生じることは少ないですが、著しく狭小な部屋、例えば4.5畳程度の部屋が複数ある場合などは、市場性の減価が生じる可能性はあります。
間取りと鑑定評価額との関係ですが、その対象不動産が存する地域にもよると思います。例えば、都心の高齢世帯が需要者となる地域では、余裕のある間取りが好まれますし、子育て世帯が多い地域では部屋数を望む需要者が多いと思います。
また、リノベーションによる間取り変更も考えられますが、パーテーシ費用も掛かりますし、耐震性などの構造上の問題が発生する可能性があるので注意が必要です。
トランプ大統領の元側近のヨットが30億円
日本の不動産鑑定士は不動産の鑑定評価が主な仕事になりますが、お隣の韓国の鑑定士は不動産以外、例えば船や宝石などの鑑定評価をしても良いそうです。
ネットで、トランプ大統領の元側近の高級ヨットの売り希望価格が2790万ドル(約30億円)との記事を見ました。但し、あくまで希望価格で成約価格はこの金額より安くなると予想されています。一般的な不動産売買の場合と同じですね。プレミア価格が付くほどの有名人ではないようです。
ヨットは日本でも時々公売や競売で売りに出ることがありますが、あまり数はないようです。今回のニュースはアメリカですが、けた違いの富裕層の多い欧米や中東、中国などではヨットの売買も多いのでしょうか?もしかしたらヨットの鑑定評価を専門とするヨット鑑定士がいるかもしれませんね。
機械式駐車場のあるマンションの鑑定評価額
中心市街地など土地に余裕のないマンションの場合、駐車場附置義務を満たすため機械式駐車場を設置しているマンションは多くあります。機械式駐車場は、狭いスペースに複数台の車を駐車できるというメリットはありますが、管理費や修繕積立金の負担はあります。
また、機械式である以上、いつかは老朽化により修繕不能をなる時期は来ますので、相当以前に設置された旧式の機械式駐車場を設置したマンションの鑑定評価額は、何等かの減価が生ずるものと考えられます。
また、最近では、車を持たない世帯も増えており、空きの多い機械式駐車場が設置されている場合、管理費や修繕積立金の不足が発生している可能性もあります。このようなマンションの鑑定評価を行う場合、以上の2点は注意する必要があると思います。
鑑定評価と地歴調査のお話
先日、ネットで江戸時代の処刑場跡地に建つホテルに霊が出るとの記事を見ました。霊感の強い人には成仏できなかった霊が見えたそうです。
不動産の鑑定評価を行う際、対象不動産とその周辺の地歴調査を行います。その際、資料として閉鎖登記簿、過去地図、必要な場合には過去の航空写真や過去の地形図などを使用して、地歴を調べます。但し、資料の収集には限界があるので、過去地図のある戦後以降の地歴を把握することが限界の場合が多いです。かなり前、ある地方で聞き取り調査をした際、対象不動産が屠殺場だったことがありました。山間の昼間でも暗い土地で、そこに向かう細い道は、牛や馬とそれを引く人が通れる広さにしたそうです。
現在は、名古屋でも江戸時代の地図などを見ることは可能なので、対象不動産がその当時どのような用途で使われていたかは知ることはある程度できますが、その当時の用途を鑑定評価額に反映させることはなく、また、あまり意味のないことだと思います。
もちろん、前記の屠殺場跡地は土も汚れていますし、市場性が著しく劣ることから相当の減価が発生しました。売却目的の鑑定評価でしたが、結局売れなかったと記憶しています。
鑑定評価とスマホ写真のお話
私が不動産の鑑定評価の仕事を始めた頃と今とでは、基本は変わりませんが、仕事のやり方の細かいところはかなり変わったと思います。便利になったといった方がいいかもしれません。
例えば、地図や資料が紙ベースから電子ベースに変わったり、実際に役所に行く代わりにHPで調べられたり、電話やFAXを使っていたのがメールになったり・・、本当に便利になりました。
そういえば最近、貴金属などの買取店が増えてきましたが、スマホの普及と関係ある、との記事を見ました。何でも、支店やフランチャイズ店から送られた品物の写真を本部の専門家が見て、査定しているからだそうです。写真だけで8割方査定することができるそうです。買取も売却も、一度も現物を手にすることなく終わることもあるそうです。机上調査のみの仲介査定に似ていますね。
不動産の鑑定評価は、収集した資料を基に実際に現地をみる必要がありますが、例えば、建物のみの評価で判断に必要な資料が十分収集できたのなら、写真を見ての評価も可能なのかな、とは思います。
30年前の遺体が発見された不動産の鑑定評価
フランスのパリで、競売により落札された不動産の地下室で30年前の遺体が発見された、との記事をみました。落札価格は3510万ユーロ(約44億円)、歴史的に重要な建物で、中庭や個人庭園を完備する高級住宅だそうです。
この競売を担当した弁護士の見解は、発見された遺体は30年前のものであり、案件に影響はない、とのことです。歴史的建物であり、18世紀半ば以降人が住んでいなかったことも考慮したのではないかと思います。
このような過去の遺体が発見された場合の不動産の鑑定評価ですが、居住用不動産あれば当然減価は発生すると思います。但し、死亡の原因(自殺か他殺かなど)によっても減価額は変わってきますし、不動産の用途が居住用ではなく、他の用途(博物館などの公共施設等)の場合は、減価なしの鑑定評価額になる可能性もあります。
減価額算定の一つの方法として、今後、地下室を使用しないことを前提に、閉鎖するための工事費を求めることも考えられると思います。
定期借地権付きのマンションの鑑定評価
マンション(区分所有建物及びその敷地)の鑑定評価は、作業量が多く時間のかかることが多いです。そのマンション(区分所有建物及びその敷地)ですが、土地部分の使用権が所有権の共有持ち分である場合と定期借地権である場合があります。当然、所有権の方が強い権利ですし、定期借地権の場合、通常、解約期間の満了時には建物を解体し、更地にして返還することになるので、立地や建物の仕様等の条件が同じである場合、定期借地権付きのマンションの方が鑑定評価額は安いことが多いです。また、通常、区分建物の所有者は地代の支払い義務がある代わりに、固定資産税等の支払いは不要となります。
この定期借地権ですが、マンションの場合は契約期間が長期となることが多いですが、借地権の残存期間が短い場合は、その点を考慮した鑑定評価となります。但し、建物の状態も良く、地主が十分な地代を得ている場合などは、定期借地契約の契約期間が延長される可能性も否定できません。
地価上昇が続く昨今、事業用定期借地権で建てられた店舗など、契約満了時に終了しているケースが多いのですが、将来、契約満了時に経済環境が悪化している場合など、定期借地契約の契約期間が延長されるケースも出てくるのでは、と思います。
建築確認がない不動産の鑑定評価
不動産、建物の売買の場合、通常は契約の際、権利証とともに建物に関する書類(確認済証や設計図書)を売り主から引き継ぐことになりますが、古い建物や転売(前の所有者が紛失してしまった)の場合、これらの建物書類がない場合があります。
このような建物の鑑定評価を行う場合、書類の有無が鑑定評価額に影響を与えるかが問題となります。私も何度か書類のない建物の評価に遭遇しましたが、建物がかなり古く価値ゼロであったため、減価は行いませんでした。対象建物が築浅物件で価値が残っている場合は、何等かの減価を行う必要があると思います。
もちろん、調査によって違法建築物であるとわかれば市場性減価、場合によっては適法な建物に戻す費用や除去費用を控除して鑑定評価額を求めることになります。
建物の鑑定評価額は、確認済証はもちろん設計図書や請負契約書等書類の有無で精度が違ってきます。鑑定評価を行う際は、依頼者に可能な限り書類を準備して頂くようお願いしています。
がけ地を含む土地の鑑定評価
先日の大雨は全国に大きな被害をもたらしましたが、がけ地の斜面を支える擁壁が崩れる被害も相次ぎました。
京都で崩落したがけ地の擁壁は、約50年前に造成された住宅団地の端で、玉石済みの上にコンクリートブロックの積み増しで、長年、基礎に負担が掛かっていたようです。水抜き穴もなく違法建築の可能性が高く、工事時期も不明、今回の大雨で崩落が起きました。
崩落が起きた地域は都市計画区域外、宅地造成区域外であり造成許可も不要、建築確認申請も行っていないと思われます。
がけ地を含む土地の鑑定評価は、そのがけ割合やがけの傾斜度、擁壁があればその維持管理や補修の状態を調査して行います。今回のような違法の可能性の高い擁壁の場合、有効利用できる土地の価格から既存擁壁を取り壊し費用及び、擁壁の再工事にかかる費用を控除して求めることになります。おそらく今回のケース、土地価格が低い場合、鑑定評価額もマイナスになると思われます。
がけ地の鑑定評価は、何件か遭遇しましたが、中々難しい評価になることが多いです。
飛び地の鑑定評価額
先日、ネットで東京都渋谷区と港区の境のある飛び地の記事を読みました。このケースは同じ東京都区部内の飛び地ですが、練馬区の西大泉町は、埼玉県新座市に囲まれた飛び地になります。
練馬区西大泉町の場合、県をまたいだ飛び地であり、上下水道をはじめ行政サービスを受ける際、解決する問題は出てくると思います。おそらく、費用負担することで、埼玉県新座市のサービスを受けることになると思います。
以前、私も飛び地の鑑定評価にあたり、問い合わせを受けたことがあります。大きな緑地公園で分断され、市をまたいだ飛び地でした。この土地は、現況、道路敷の緑地であり、上下水道はなし、共用をうけることも難しい土地でした。飛び地の解消を目的とした公共の買収でしたが、土地面積も狭く、妥当な鑑定評価額が付けられていたと思いました。
また、名古屋市ですと市街地の中に区界がある地域がありますが、商業地の鑑定評価の場合、需要者である法人の選好性を考慮し行政間格差をつけることもあります。法人は、営業上、所在地にもこだわりますから。
飛び地の鑑定評価、やはり難しい評価になることは間違いなさそうです。
« Older Entries Newer Entries »