Archive for the ‘鑑定評価の話’ Category
大規模工場跡地の鑑定評価
大規模工場の鑑定評価は、類似性を有する取引事例も少なく、難しい鑑定評価の一つだと思います。大規模工場は、規模が大きいのはもちろんですが、存する建物の数も多く、用途も工場や事務所など多岐にわたり、また、敷地内に調整池がある場合などその扱いに苦労することになります。
先日、岩手県にあるNEC工場跡地が売買される、との記事を見ました。広さ約8万3600㎡、駅に隣接しているそうです。気になる売買価格は17億6000万円、不動産鑑定評価額に基づいた価格だそうです。
この鑑定評価額、土地建物、土地のみの価格かは不明ですが、立木と建物の解体撤去費用が5億2800万円とのことです。やはり大規模な工場だけあって、解体撤去費用も高額ですね。
跡地ですが、市が民間資本を導入すながら利活用する計画とのこと、首都圏から離れた広大地、手を挙げる民間資本は現れるかなど、今後の動向が注目されます。
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不動産の理論的物件価格
不動産の鑑定評価を行う際、その価格の種類として主に積算価格(不動産の再調達原価に着目する原価法を適用)、比準価格(不動産の市場性や比較可能性に着目する取引事例比較法を適用)、収益価格(不動産の収益性や投資採算性に着目する収益還元法)が上げられます。
先日、あるネット記事で「不動産の理論物件価格」という言葉を目にしました。初めて知る言葉だったのでよく読んでみると、中古マンションの家賃中央値から算出した価格とのこと、おそらく収益(家賃)を還元利回りで還元して出された価格だと思われます。
この不動産の理論的物件価格とは、鑑定評価における収益価格のことだと思います。確かに以前は収益価格を理論値と書いた鑑定評価書を多く見ましたが、最近はめっきり見なくなりました。理論値では価格に説得力がなく、鑑定評価額の信頼性が損なわれることが理由だと思われます。
不動産の収益価格は、採用する還元利回りが重要ですが、このこの不動産の理論的物件価格を求める際の還元利回りはどのように求めているのか、とても興味深く思いました。
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駅徒歩至近の商業地の鑑定評価
駅からの距離は不動産の価格形成要因であり、特に駅から徒歩至近の商業地は高額で取引されることが多いです。駅徒歩圏、特に最近では5分以内の土地が好まれる傾向にあり、当然、駅から近くなる程土地の価格は高くなっていきます。
先日、東京都武蔵野市で駅至近の土地を不当に安く売却した、とのことで現市長が訴えられた、との記事を見ました。問題の土地取引は2件、駅徒歩約1分(約300m)と駅徒歩3分(約350m)の土地だそうです。
土地を巡る裁判の場合、原告、被告が不動産鑑定評価書を提出して双方が価格の妥当性を争い、最後、裁判所が専任した第3者が鑑定評価(評価人鑑定)を行い、判決が下されることになります。
価格の妥当性の判断、鑑定評価書が採用した周辺の取引事例価格が重要になってきますが、両土地の2分の距離の差がどの程度価格の差として反映されるのか、裁判の行方と併せて興味深く見守りたいと思います。
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ゴルフ場のクラブハウスの鑑定評価
バブル期に大量に開業したゴルフ場、現在もゴルフ人口の減少によりオーナーチェンジしたり廃業するゴルフ場も発生しています。廃業したゴルフ場の中には、太陽光発電のソーラーパネルが設置されるケースもあり、残念に思うことがあります。
ゴルフ場、オーナーチェンジや廃業の際、不動産の鑑定評価を行うことが多いのですが、バブル後に大量の鑑定評価がなされており、評価方法は確立されているようです。
ゴルフ場の鑑定評価、原価法を適用する際、土地建物は分けて評価しますが、ゴルフ場はコース部分とクラブハウス等の建物に分けられます。
そのクラブハウスの価格ですが、先日、ネットで10億円から20億円との記事を見ました。クラブハウスや受付、ロビー、ロッカー、浴室などの設備を整える必要があり、標準的なゴルフ場の場合、上記の金額になるそうです。
ちなみにコースの造成・整備費は1ホール約2億円と言われており、開業には多額の投資が必要になることが分かります。
今後、ゴルフ人口の増加が見込めない中、新規ではなく既存のコースを改修して使用することが主流になっていくと思われます。
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病院跡地の鑑定評価
自治体の財政が厳しい中、公立病院の統廃合が進んでいます。私が住んでいる名古屋市でも、公立病院が廃止され、民間に売却されるケースが見られるようになりました。
昨日、ネットで病院跡地の地中から医療廃棄物が見つかった、との記事を見ました。買い手である町が、土地所有者と旧賃借人であった県を訴える、との内容です。町が求めた損害賠償額は1億9532万円、廃棄物の撤去処分費などとのことですが、心理的瑕疵も含まれた金額であると考えられます。
病院跡地を鑑定評価する場合、地下埋設物があれば土地価格から撤去費を控除して求めることになりますが、特に入院設備などがある大規模な病院の場合、何等かの心理的瑕疵も考慮して鑑定評価を行うことになると思います。
また、今回のような医療廃棄物の場合、土地が汚染されている可能性が高く、土壌の入れ替えに伴う費用が発生することにも注意が必要です。
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公園の近くの住宅地
最近、地域に保育園の計画があると反対運動が起きることがあると聞きました。朝晩、送迎の車で道が渋滞したり、園児の声が煩いことが理由のようです。
先日、公園近くの物件の住み心地は?との記事を見ました。公園は緑があったり、子供の遊び場が確保できたり、特に子育て世帯からは歓迎されると思っていましたが、やはりデメリットもあるようです。
前記の保育園と同様、子供の声が煩いと感じる方もいますし、最近では浮浪者の方が公園で空き缶を一時保管していたりする光景も見られます。浮浪者が滞在していたり、夜、不審者が屯している、との話を聞くこともあります。
このような公園の近くの住宅地を鑑定評価する場合、通常は増価することはありませんが、管理や環境が著しく悪い公園の場合、周辺利用の状態などの項目で減価することも考えられます。
本来、皆が楽しむ場所である公園が、一部利用者のモラルの低下で減価要因にさえなってしまう、残念に思います。
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店舗付住居の鑑定評価
私が子供の頃、近所の商店街や路線沿いには連棟式の店舗付住居が沢山建っていて、そのお店でお買い物や食事をしたものです。内階段を使って店舗と住居を行き来するのが一般的で、お店の入口が玄関、又は家族は勝手口から出入りしていました。
個人商店の減少に伴い、店舗付住居も少なくなってきましたが、最近、店舗付住居が増えている、との記事を見ました。その記事では、そのような物件を「小商い物件」と呼んでいました。
このような店舗付物件の鑑定評価は、原価法、取引事例比較法を適用して価格を求めることになりますが、重視すべき価格の判断に迷うことが多いです。収益物件であり高めの賃料が設定されるのが通常ですが、競争力が弱い物件などでは専用住居に近い賃料であることも多く、収益価格は低めに試算される傾向があります。
このような場合は、所有者自ら店舗及び住居として使用することが一般的と判断し、積算価格を重視して鑑定評価額が決まると考えられます。
ちなみに私の事務所も2階、3階が住居となっており、今、流行りの小商い物件です。
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築30年の中古住宅の価格
以前は木造の個人住宅の建物は、築20年を超えると価値ゼロと言われましたが、通常の使用であれば、築20年程度でも継続して居住は可能であり、いくらかの価格が付くことが多いです。但し、老朽化や陳腐化が激しい場合は、価値ゼロ、又は取り壊し最有効で鑑定評価を行う場合もあります。
先日、築30年以上の中古住宅は築5年以内の半値、との記事を見ました。築30年経つとさすがに建物価値ゼロとなることが多いのですが、その場合は土地の価格のみが中古住宅の価格となります。
築5年程度の中古住宅は値落ちが少なく、買い得感がないため売り難いと聞いたことがありますが、築5年で土地価格=建物価格、30年で建物価格ゼロで土地価格のみ=半値、という内容でしょうか。
最近は中古住宅が見直され、リフォームして住みたいという需要者も増えているようです。中古住宅の購入の際、一つの目安になる考え方だと思います。
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太陽光発電設備のある家の鑑定評価
少し前から話題になっていた東京都の新築戸建住宅の太陽光発電設置、条例で義務化される見込み、との記事を見ました。土地や建築資材の価格高騰が続く中、不動産、建築業者の方はもちろん購入者にとっても厳しいことになりそうです。
その太陽光発電設備のある家の鑑定評価、私は遭遇したことはありませんが、実際に稼働するのであれば、建物価格に何等かの増加要因として考慮する必要があると思います。
設置された際の工事費等の価格がわかる場合は、設備として価値を判定することになりますし、中古等で取得費がわからない場合も、間接法にて価格を求めることになると思います。
今後、太陽光発電設備のある家が普及した場合、一般的な建物設備とは切り離し、発電設備を単独で評価する方法を検討する必要が出てくるかもしれません。
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再建築不可物件の鑑定評価
再建築不可物件とは、建築基準法施行以前に建てられた既存の建物が現行法の建築要件を満たしておらず、既存の建物を取り壊して再建築が出来ない不動産を言い、接道要件不足やがけ地などに建つ物件が上げられます。
旗竿地や無道路地など、建築基準法上の道路に2m以上接面していない土地の鑑定評価は、道路用地を買収して接道要件を満たすことは理論上可能であるため、計算式によって減価額を求めることも可能です。また、がけ地の場合、現行の擁壁を取り壊して再構築することで建築許可が下りる場合は、それらに要する費用を土地価格から控除して鑑定評価額を求めることになります。
また、接面道路が建築基準法上の道路以外の道である場合、例えば昔からある長屋のような建物で、細い私道の奥にある土地などの場合、再建築は極めて困難となります。
このような不動産を鑑定評価する場合、建物の継続利用が可能な場合は建物の耐用年数を判定し、有期還元による収益還元法による収益価格を重視して鑑定評価額を決定することになると思われます。
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