Archive for the ‘鑑定評価の話’ Category
お寺の鑑定評価額
先日、ネットでお寺を買う富裕層が増えている、との記事を見ました。お寺は全国に約7万4千件程、その内住職のいない空き寺は1万~2万件だそうです。かなりの数ですが、人口減及び檀家の高齢化などでお寺の経営も楽ではないようです。
そのお寺を買うにあたっての価格ですが、お寺を鑑定評価する場合、宗教施設として継続使用するのか、他の用途(簡易宿泊所や合宿所など)に利用するかで価格の種類が違ってきます。前者の場合は特殊価格(一般的に「市場性を有しない」不動産の経済価値を表す価格)、後者の場合には通常の市場価値を有する価格、正常価格を求めることになります。今回のようなビジネス目的の売買の場合は、正常価格として鑑定評価額を決定することになると思います。
お寺の鑑定評価は私も遭遇したことはありませんが、以前、境内地(お寺の境内の土地の一部)を鑑定評価したことはあります。そこはとても大きなお寺の一部で、本堂などの修繕を行う大工さんなどの宿舎として使われていた土地でした。また、知り合いの不動産鑑定士さんは、実際のお城を鑑定評価したそうです。
お寺を利用したビジネスモデル、まだ普及していませんが今後増えていくかもしれません。
不動産の価格は駅距離と道路
不動産の鑑定評価は、主に不動産(土地・建物)の価格を決めることですが、その価格は価格を形成する要因(主に地域要因と個別的要因)によって決まることになります。
私は、その中でも駅距離と道路幅員が重要だと考えています。もちろん、駅の規模や路線(名古屋だと地下鉄沿線が好まれます。)も重要ですが、地下鉄駅から徒歩圏で6m超程度の幅員の道路に接する土地は、極端に安くなることはない(需要がある)傾向にあります。
先日、スーモのアンケートを見ましたら、今回のコロナ禍でテレワークが増えた影響か、「広さ」と「駅距離」のどちらを重視するかの問いに対して、広さ派が52%、駅距離派が30%という結果になったそうです。ちなみに、一戸建て派が63%、集合住宅(マンション)派が22%、こちらも広さ重視の結果となりました。
私は、今回の結果は一時的なものであると考えていますが、もし、この傾向がスタンダードになるようであれば、不動産の鑑定評価を粉う際、価格決定において重視すべき要因も変えなければならなくなると思いました。
レトロな古民家郵便局の鑑定評価額
古民家の鑑定評価、まだ遭遇したことはありませんが、難しい評価になると思います。難しいのは土地より建物、文化的価値のない普通の古民家であれば建物価値はゼロになると思いますが、維持管理がされており、住居として使用可能であれば、建物にある程度の価値を見て、必要とされる修繕費を控除すること建物価格を求める場合も考えられます。
先日、鹿児島県枕崎市の旧郵便局の建物(事務所付住居)が土地付きで100万円で売りに出されたとの記事を見ました。明治37年に建てられたレトロな建物で、1980年代後半まで人が居住していたそうです。ちなみに建物は当時としてはモダンな洋風の造りで、文化的価値があるとのことです。
このような不動産を鑑定評価する場合、土地の価格に加えて建物の価値をどの程度見るかが問題となりますが、記事によると老朽化が激しく、修繕費に少なくても300万円~400万円掛かるとのこと。私がこの不動産を鑑定評価するとしたら、建物価値はゼロ円、文化的価値を考慮して取り壊し費用を考慮しない、という評価方針になると思います。
取壊し最有効の鑑定評価
不動産鑑定士は、土地及び建物(自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地等)の鑑定評価を行う場合があります。土地上の建物の老朽化が激しかったり、建物と敷地との適応、環境との適合を著しく欠いていると判断した場合、その建物を取り壊すことを前提に鑑定評価を行います。そのような評価を「取り壊し最有効」といいますが、最近は建物の解体費用、特にRC造の建物のコンクリート屑の処分費が高く、取り壊し費用が高額になる傾向にあります。
取り壊し費用が高額なら、そのまま現状で使っては?との声もありますが、古い建物は効率が悪く、修繕・維持費も高額となります。また、敷地との適応性や環境との適合性を欠いた建物の場合、十分な収益を生むことができず、結果として不動産の価値を下げることになります。
先日、ネット記事に滋賀県の廃墟マンションの解体費が1億1800万円と出ていました。3階建ての建物、写真で規模をみると妥当な金額と思われます。また、別に記事では100戸の分譲マンションの解体費が少なく見積もって3億円と出ていました。先程の滋賀県のマンションの規模と比較すると、やはり低めの見積額だと思います。
建物の解体費及び処分費は、今後も上がっていくと考えられますが、コンクリート屑を上手く分別して2次砕石として活用するなどの工夫が必要になってくると思います。
境界のわからない土地の鑑定評価
土地の鑑定評価を行う場合、まず、依頼者から頂いた書類などをもとに対象不動産の確定を行います。そのために、実際に現地に行って境界杭などの調査を行いますが、市街地の場合、擁壁などの下に埋まっていることが多く境界杭を確認できることは多くはないです。
以前、かなり広い中学校の敷地を鑑定評価した際、校庭など学校敷地以外の道路なども含まれていることが分かり、その際は境界について条件をつけて鑑定評価を行いました。また、係争中であったため、公図に地番ごとの境界線がひかれておらず、他の方法で対象不動産を確定したこともありました。
先日、有名芸能人の自宅が越境しており、越境部分にある擁壁を取り壊すことになったとの記事を見ました。1筆だった土地を分筆し、その芸能人と隣地所有者が購入、越境し擁壁設置、建物建築に至ったようです。
土地を分筆する場合、土地家屋調査士の方が測量後、関係者の立ち合いものと境界杭を設置し、建物を設計する建築士もその際作成された地積測量図をもとに図面を引くのが普通なので、通常、今回のような越境はあり得ないのですが。
今回のケース、弁護士同士の話し合いになっているようですが、責任の所在はどこのあるのでしょうか?興味深いところです。
高級住宅街は高台の理由
一般的に、高級住宅街は高台というイメージがあるかと思います。大手ハウスメーカーなど街並みがでるコマーシャルでも、高台から街並みが見下ろせたり、なだらかな坂になったロケーションが多いと思います。このような住宅地は人気があり、鑑定評価額も高くなります。
高台の住宅地域が好まれるのは、眺望・景観に優れるのはもちろん、人間が高い所に住みたいという本能なのかもしれません。私の住んでいる名古屋市でも、名古屋市中央部から東に向かって登りの丘陵地になっており、地下鉄東山線沿線に優良な住宅地域が多いのも、利便性はもちろん地勢がよいことも理由だと思われます。
また、名古屋市内で大きな河川は新川庄内川、矢田川くらいですが、東京や大阪は河川が多く、河川の氾濫等による災害リスクが少ないことから高台が好まれたようです。
最近続く自然災害の影響で、この傾向はますます強くなったと感じます。
欠陥マンションの鑑定評価額
耐震性の不足や雨漏りなど、欠陥マンションの問題が増えています。販売会社が大手のディベロッパーであれば、建て替えなどで問題を解決するケースもありますが、中小の不動産会社であれば修繕で済ます、又は裁判で責任を否定するケースもあります。
滋賀県で、耐震性や雨漏りによる瑕疵が発生したマンションが裁判になっているケースがあります。販売会社が施工を請け負った企業を訴えたケースだそうです。
この欠陥マンションの価格ですが、最上階で3800万円だったものが、資産価値50万円まで下落したそうです。減価額はどのように査定したのでしょうか?
区分マンションを鑑定評価する場合、いくつかの手法を使いますが、減価額は、原状回復費用に加えて市場性の減価を加算して求めることになると思います。今回の査定額50万円ですが、買い手が現れてたらこれくらいの価格では?との推定値のような気がします。
欠陥のある住宅は売るのも難しくなるので、購入は慎重に行う必要があると思います。
反社会的勢力事務所の向かい土地の鑑定評価
先日、神戸市の反社会的勢力の事務所の向かい土地が競売に出るとの記事が出ていました。広さは約400㎡(約120坪)、相場は坪200万円~300万円。通常なら2億円以上の価値のある土地になります。
このような土地の場合、環境要因で減価が発生することになります。鑑定評価を行う場合、非常に難しい評価になると思います。おそらく、かなり低い鑑定評価額(売り出し価格・最低落札価格)になると思います。
以前、ラブホテルの隣地の鑑定評価をしたことがありますが、その土地はすぐに売れました。しかし今回は反社会的勢力の事務所、しかも抗争中となると事情が違ってきます。
今回のケース、最落価格も興味深いですが、落札者がいるかどうかとても興味深いです。
375万円の絵画が100億円に
絵画は適正な価値の把握が難しく、オークションなどで売買された価格がその価値とされることが多いようです。
その絵画ですが、北九州市に35年前に375万円で買った買った絵画が100億円の価値になった、との記事が出ていました。購入を決めた学芸員は、ただ純粋に芸術的見地から選んだのか、価値が上がるとの先見性から選んだのかは不明ですが。
ちなみにこの100億円超の価値は、オークションに出した場合の予想落札価格だそうです。オークションに出品される話はありませんが、興味深いところです。
ただ、不動産と同じく絵画も価格の上下動が激しいので、売り時が重要です。上手く売り抜けて、市財政に貢献してくれたらと思います。
火葬場予定地の鑑定評価額
火葬場は忌み施設と考えられ、通常は市街地から離れた土地に造られるこが多いのですが、ごみ処理場と同様、新規に建設される際は反対運動が起こることが多いです。
京都府亀岡市でも、現在の火葬場が老朽化し能力が不足する可能性が出てきたため移設し新設を計画したところ反対運動が起きました。1審、2審とも市が勝訴したものの、公社の購入価格8億5千万円が裁判所の鑑定評価額より約3億円高かったことが問題を長期化させたとのことでした。8億5千万円、利便性もある程度考慮された広大な敷地なののでしょうか?火葬場予定地にしては高いという印象です。また、裁判所の鑑定評価額との差3億円も大きいと思います。
このような公的な土地買収の際、得てして不明瞭な価格決定がなされることがあります。移転は決まったこととして、市は買収額の根拠を市民に説明する義務があると思います。
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