Archive for the ‘不動産の価格’ Category
豊洲用地訴訟の鑑定評価額
先日、東京都豊洲移転用地訴訟の東京地裁判決がでました。結果は、割高購入は認定したものの、土地の取得は不合理ではなく、住民敗訴でした。
今回、東京都の購入費(取得価格)が約578億円、裁判官は、正常価格は購入費から土壌汚染対策費を引いた額、取得価格は134億円高かったと認定しました。正常価格は約444億円、但し、取得価格との差額が3割程度なので不当な高値ではない、という判断のようです。
不動産の鑑定評価額の高値上限は3割程度まで、という指標と示した今回の判決、今後の用地買収における鑑定評価に影響を与えそうです。
埋蔵文化財の埋まっている土地の鑑定評価
土地の鑑定評価を行う場合、遺跡など埋蔵文化財が埋まっているか否かの地歴調査を行いますが、不動産鑑定士の調査では実際に試掘するわけではなく、市町村の教育委員会などが持っている遺跡マップにて調べることになります。
私も、過去何度かこのような鑑定評価に遭遇したことがありますが、対象地や隣接地、周辺などで試掘・本掘の記録があるか、又は実際に土器などが発見されたかなどを調査しすることになります。
少し前ですが、長崎県の県庁跡地の発掘調査で石垣群が姿を現したそうです。県庁跡地ですので、おそらく事業主体は長崎県だったと思いますが、もし、民間の事業者だった場合、本掘費用は事業者負担になるので大変な負担になります。私が学生だった頃、読売新聞中部本社の社屋で織田家の遺跡が発見され、社屋の建て直しにお金と時間が掛かったと聞いたことがあります。
埋蔵文化財、遺跡として残すことも大切ですが、事業者の負担も軽くする制度を検討すべきだと思いました。
女性が購入したマンションの価格は3000万円台
新型コロナウィルス感染症の影響でリモートワークが普及するにつれて、需要者のニーズが駅距離から広さ、マンションから戸建住宅、などという声も聞かれるようになりました。但し、女性はセキュリティーを重視しマンションを好む傾向が強いようです。
先日、ネットに女性が初めて購入したマンションの価格の4割が3000万円台、との記事が出ていました。おそらく、東京及びその近辺のマンション売買が中心なのでしょうか、結果は高めの価格という印象を持ちました。
マンションの購入、メリットとデメリットがありますが、メリットとして所有する満足感があると思います。自分の家は、自由に模様替え等ができますし、賃貸のように退去を求められることもありません。
もちろんデメリットとして、借入金があればローンの支払いは残りますので、十分な検討の後、購入を決めることが大切だと思います。
容積率の緩和のお話
容積率とは、敷地面積に対する建築延べ面積(延べ床)の割合のことをいい、建蔽率とともに建築可能な建物の規模を規定するものとなります。この容積率は、不動産の鑑定評価で土地の価格を求める際、大きな決定要因となります。
最近、容積率緩和の話を目にすることがおおくなりました。名古屋市ですと名駅や栄地区などで高級ホテル等を誘致するため、京都では大規模マンション建設のため、また、最近多発している水害対策の施設整備を目的とするために容積率を緩和する、又は緩和の検討中とのことです。
容積率は、道路等の公共施設の能力に対応した機能の維持と増進を図ることを目的としており、既に既存の容積率を前提に建物建築を行った事業者との公平性を図るためにも、安易な容積率の緩和は認められるべきではないと思います。
都市の活性化も重要だと思いますが、美しい街並みを守るためにも容積率の緩和は慎重な検討の上行って欲しいと思います。
瑕疵物件の鑑定評価額
不動産の瑕疵物件(自殺、殺人事件、孤独死等があった不動産)の鑑定評価を行う場合があります。このような忌み物件は、通常、市場性が落ちることから減価することになりますが、減価額が問題となります。
一般的に、人の死があった物件が該当することになりますが、その程度、残忍な殺人事件があれば通常買い手はつかず、建物は取り壊し、土地も相当に減価が生ずることになります。最近増えている孤独死ですが、遺体の損傷が激しいなどの事情がなければ減価なし、又は故人の生活の面影を完全に消す程度のリフォーム代+αの減価になると考えられます。
私も過去、瑕疵物件に遭遇したことがありますが、あるマンションで事故死と自殺、親子で二人死亡した不動産がありました。売買目的でしたが、後で聞いたところ、買い手があったそうです。価格は事故物件にしては若干高めに感じました。
このような事故物件の鑑定評価、心理的に辛く、故人のご冥福を祈りながら評価しています。
不動産鑑定評価の積算価格
不動産の鑑定評価を行う際もとめる不動産の価格には、主に、積算価格(原価法:不動産の再調達原価より価格を求める方法)、比準価格(取引事例比較法:不動産の市場性に着目して価格を求める方法)、収益価格(収益還元法:不動産の収益性に着目して価格を求める方法)があります。
その中でも積算価格は、不動産の再調達原価、すなわち費用性に着目して価格を求める方法であり、対象不動産が土地建物である場合、必ず試算する重要な手法になります。
昨日、投資判断に基準で積算価格も重視してみえる投資家の方について書きました。この方は、土地は路線価から求め、総額から先に求めた土地価格を控除して建物価格を求めていると思います。但し、都心の商業地などでは路線価が地価の上昇に追い付いていない、また、地方などでは路線価が地価の下落に追い付いていない場合があり、必ずしも路線価が実勢価格を反映していないことに注意は必要だと感じました。
このような配分法(総額から土地又は建物の価格を控除して価格を求める方法)は、私も利回りを求める場合などで多用していますが、土地価格は周辺取引事例価格、建物価格は構造、経過年数などから妥当であるかの検証を加えています。
路線価は一般的に、実勢価格の8掛けと言われており、相場価格を調べる際にはとても便利なものですが、投資物件など高額な取引の場合、求められた価格を慎重に判断することが必要だと思います。
投資家が不動産を選ぶ条件
賃貸マンションなどの収益物件からの家賃収入、いわゆる不労所得による生活を夢見る人は多いですが、上手くいっている人は少ないものです。上手くいかない理由は、まず、収益性の高いよい物件を選ぶ眼がないことですが、それ以外でも賃貸経営のノウハウがないことも理由だと思います。
先日、ネットで家賃収入11億円という税理士さんが書いた記事を見ました。シンプルな物件選びの基準を持ってみえて、私もなるほど、と思いました。
この方は、全国的な規模で不動産投資を行っていると察しましたが、人口の増えている地域の物件、特に東京を中心に投資を行っていました。以前、人口の少ない地域を中心に不動産投資を行っている人の本を読みましたが、この税理士さんは正統派の不動産投資だと思います。
また、よく言われる駅距離ですが、東京都内で徒歩15分以内、郊外で10分以内が限界だそうです。やはり東京だからでしょうか、名古屋だと徒歩10分を超えると急に競争力が落ちる印象があります。
あと、積算価格を重視して物件を見極めておられました。積算価格は、土地と建物の価格の和から構成されますが、融資の関係から土地価格(面積)割合の高い物件がよいとのお考えです。収益価格は土地建物一体で鑑定評価額がでますので、積算価格による土地建物割合も考慮し慎重な判断をしているのだと思います。
収益不動産の鑑定評価は作業量や判断を要する箇所が多く、難しい評価になることが多いのですが、やりがいもあり私は得意としています。いつかこのような投資家の方とお会いして、一緒にお仕事できたらと思います。
都心の商業地の価格
都心の商業地の価格が高いのは、繁華性や駅距離もありますが、容積率と前面道路の幅員などが優れ、高層マンションや事務所ビルなど収益性の高い建物が建てられることが理由です。さらに最寄り駅から近かったり、土地の形状、規模などがよいと非常な高値で取引されています。
特に最近、そのような土地は訪日外国人向けのホテルが多く建てられ、名古屋市でも沢山のホテルが建ち並ぶようになりました。何でも稼働率は8割以上、収益性も高く今後の需要も見込まれると読んだのか、かってはマンション適地という言葉が流行りましたが、ホテル用地との言葉も一般的になりました。
このホテルですが、今回の新型コロナウィルス感染症の影響で、訪日外国人が訪れなくなったため、ホテル建設も中止しているとの記事を見ました。もし、この傾向が長期に及び場合、都心の地価への影響はどうなるでしょうか?
マンションや事務所ビルの利用に変わられると思いますが、収益性の高さから驚く高値で取引されていたホテル需要がなくなる場合、商業地の地価の高騰も落ち着いてくのではないかと思います。
築約170年の古民家の価格
先日、古民家の鑑定評価額について書きましたが、先日、ネットで築173年の古民家の売り価格が1990万円との記事を見ました。
場所は青森県弘前市、広さは693坪(2290平米)、建物は6LDKの古民家ですが、フルリフォームされており、買い手は手を入れることなく住めるそうです。
ちなみに建物内には、売り主の社長さんが集めたアンティーク家具などの調度品も置かれており、買い主にそのまま譲りたいとのことです。
この古民家が高いか安いかは、人によるかと思いますが、ここまでのリフォームにかかる費用と調度品の価格、そして歴史的価値を考えると、価値のわかる方には安い買い物なのかもしれません。
新型コロナウィルス蔓延による不動産価格への影響
現在、少し落ち着いてきた感はありますが、今回の新型コロナウィルス蔓延の経済への影響は甚大なものがありました。特に、営業自粛を余儀なくされた商業店舗の売り上げ減の影響は大きく、廃業若しくは賃料の値下げ要求が相次いだとの声も聞きました。
一方、住宅地ですが先行きの不透明感から取引自体減っており、特に一時取得者層の給与等、購入及び返済資金の見通しが立たないケースが多く、買い控えが起きているようです。
今後の不動産価格ですが、新型コロナウィルス蔓延の第二波の規模にもよると思いますが、第一波のような大規模な営業自粛が要請されるような事態になれば、商業地の価格は大きく下落することが予想されます。また、金融機関の融資姿勢は厳しくなることが予想され、体力のなくなった企業が人減らしに走るような事態になった場合、住宅地の価格も下がるものと予想されます。
これらは全て私の予想ですが、経済情勢と密接に結びついている不動産の価格、予断を許さない状況であることは間違いなさそうです。
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