Archive for the ‘特殊な土地の評価’ Category
間口や形状の劣る土地の鑑定評価
不動産の鑑定評価を行う場合、通常、形状は長方形、方位は北向きの中間画地を標準画地に設定することになります。この標準画地と対象不動産との個別的要因及び地域要因の比較を行い比準価格を求めます。
先日、ネット記事である不動産業者の方が、土地の格差について書かれていました。内容は、
同じ形状の土地の場合
南向きの土地:100
北向きの土地:90
同じ方位の土地の場合
通常の間口の土地:100
間口の劣る土地:80
南向きの土地の場合
通常の間口・奥行・形状の土地:100
奥に向かってL字型の土地:40
とことでした。
少し強めの修正率だと思いますが、実勢の売買価格はこの程度だと思われます。最も、間口や形状は、その土地に建物が建つか否かでも減価率は変わってきますので、この数値は経験則に基づいた一般的なものだと思います。
ちなみに私がこのような土地を鑑定評価する場合、土地価格比準表や坪田式による計算式、仲介査定や財産評価基準の格差率、あと、不動産業者の方の聴き取り結果などを用いて格差率を決定しています。
河川の鑑定評価
河川の改修工事などに掛かる用地買収などで河川の鑑定評価を行うことがあります。河川は通常、官地であることがほとんどですが、以前、1号地(流水地)が民地であったことがありました。昔の河川改修の際、買収漏れがあったことが理由だそうです。また、3号地(堤外民地)の場合、既得権で一般住宅が建っているケースもあります。
1号地の鑑定評価を行う場合、実際の取引事例が皆無に等しいので割合法(堤内地に設定した標準地の価格との割合から堤外地の価格を求める)を適用して鑑定評価額を求めることが多いです。
また、堤外民地の場合、実際の取引事例が取得できる場合は取引事例比較法と前記の割合法を併用して鑑定評価額を求めることになると思います。
河川の鑑定評価は難しい評価の一つですが、公共のお仕事をしている不動産鑑定士の方は意外と身近な評価なのかもしれかせん。
物流施設用地の価格
インターネット通販の普及に伴い、ここ数年、物流施設用地の価格が上がっています。但し、物流施設用地には要件があり、大規模な土地であることと、幹線道路沿いに立地するなど系統・連続性に優れることが必要となります。
東京都板橋区の日本製鉄鋼管工場跡地の入札記事を見ましたが、異常な過熱ぶりだったそうです。この土地は、広さ約11万㎡、希少性が高く10年に一度の出物、と言われています。
入札参加企業は20社以上、最高値は坪単価250万円前後だったようです。コロナ禍後もインターネット通販市場は拡大し、需要が増えることを見越しての入札と考えられます。
物流施設用地が活況を呈する一方で、既存の百貨店やショッピングモールの閉店が加速してくことが予想されます。
東京都の旧中野刑務所の価格は100億円超
歴史的に価値のある土地建物などを国や自治体が購入することがありますが、先日、作家の小林多喜二が収監された旧中野刑務所跡地を中野区が購入する方針、その記事を見ました。
中野区は跡地に小学校を建てる計画とのことですが、完成当時の面影を残す正門は文化的価値が高く、保存されるようです。
ちなみにこの旧中野刑務所跡地の価格ですが、中野区は100億円超で購入する方針だそうです。不動産鑑定士の鑑定評価に基づいた価格だと思いますが、小学校用地としてはかなり高額ですね。
JR中央本線中野駅からも徒歩圏であり、住居系の開発も可能だとは思います。但し、刑務所跡地、それも政治犯を収容していた過去を有することから、鑑定評価を行う場合、心理的瑕疵(スティグマ)も問題になると思います。この100億円超の価格、心理的瑕疵を考慮した価格であるか興味深いです。
文京区大和郷の大豪邸の価格
高級住宅街は名声と品等に優れることが条件であり、各界の名士や富裕層の人々が多く住んでいることが多いです。名古屋ですと、東区白壁や橦木町、千種区菊坂町や昭和区の南山町などがあげられます。
このような高級住宅地の売り物件は中々少ないのですが、東京都文京区大和郷の大豪邸の売り価格は衝撃でした。記事には2017年とありますが、なんと47億5000万円、286坪の敷地に建物付きの価格ですが、やはり名古屋とはレベルが違いますね。ちなみに年間の維持費だけでも数千万円とのことです。
このような高級住宅街は、近年の代替わりを経て土地が細分化され景観が損なわれることもあるのですが、この地域は一般社団法人の住民組織が街の秩序を守っているそうです。
ちなみにこの付近の2020年地価公示価格は、400万円/坪(121万円/㎡)、一坪の値段でちょっとした高級車が買えてしまう価格です。
私とは別次元に住んでいる人々の生活、想像するのも難しい、そんな思いがします。
沖縄県宮古島のドイツ文化村の鑑定評価額
先日、沖縄県宮古島市がドイツ文化村の売却を検討、との記事を見ました。但し、まだ売却が決まったわけではなく、売却を含めて検討、とのことです。今後、市は土地や建物の評価を確定させる方針だそうです。
宮古島市はドイツ文化村の鑑定評価を行い、その評価額から今後の方針を決めると考えられますが、非常に難しい評価になると思います。
宮古島がインバウンドによる訪日外国人の需要が見込めるのであれば、ホテルなどに転用利用する事業者などが需要者として想定されますが、現在はコロナ禍で先が見えない状況にあります。
1996年オープンとのことで建物の老朽化も見られ、修繕費も多額になることが予想されます。
このドイツ文化村の鑑定評価額、どのような価格になるかとても興味深いです。
土地の一部が他人の土地建物の鑑定評価
先日、京都市で市営住宅の一部の土地が50年間私有地であったとの記事を見ました。但し、この私有地は売買契約の不備で、登記移転手続きをしていなかったことが理由です。
土地の一部が他人の土地建物を鑑定評価する場合、その一部の土地について賃貸借契約等の土地使用権があれば土地及び借地権付建物の鑑定評価、使用借権であれば土地及び使用借権付建物の鑑定評価、不法占有等の無権利者であれば土地価格から建物の取り壊し費用を控除した価格が鑑定評価額になると考えられます。
但し、土地使用借権は個別性が強く、案件に応じて鑑定評価の方針を決定し評価することになると思います。
都市計画区域外の土地開発
先日、兵庫県の都市計画区域外でのミニ開発が、市の要綱によりとん挫、との記事を見ました。都市計画区域外を「市街化調整区域に準ずる」という規制を設けたことにより、仕入れた素地を宅地分譲することができず、野ざらし状態になっているそうです。
名古屋圏では見かけませんが、関西では市街地に比較的近い場所が都市計画区域外になっているようです。都市計画区域外は水道などのインフラ整備がありませんが、それらと開発業者の負担で宅地分譲しても、需要があり採算があったとのことでした。
市街化調整区域は市街化を抑制する地域であり、原則、開発行為はできませんから街の開発はそこで止まってしまいます。既に住んでいる人はどうなるのでしょうか?
以前、静岡県で、都市計画区域外の山林売買(原野商法)で買われた土地を鑑定評価したことがありますが、公図上は区画割されていますが、実際は山でした。但し、その区画の中で1件だけ家が建っており、犬のブリーダーの人が住んでいました。おそらく、一般の人は住めない土地でした。
今回の兵庫県のケースは、上記のケースとは違い人が住める地域ですし、法律の変更は妥当だったのか再検証する必要があると思われます。
地上構造物の鑑定評価額への影響
日本は電気や電話線などを引くため、地上に電柱を設置しています。メンテナンスがしやすい反面、景観を損ねるとの声を聴くこともあります。
ネットで、福知山市が福知山城に向かう景観をよくするため、道路の電柱を地中化、との記事を見ました。古い街並みが残っている地域などでは、景観に与える影響は大きと思います。
以前、富士宮市で携帯電話の鉄塔を建てたとき、地元や地権者の方から反対が多く設置に難航した記憶があります。毎日、身近で富士山を見て生活している人にとっては、鉄塔の存在が富士山の美観を損ねるとの思いがあるようです。その時は鉄塔の色を、極力目立たないよう茶色に塗ったりし、地元の方の承諾を得て建設しました。
このような鉄塔などの地上構造物の存在が鑑定評価額に与える影響ですが、観光地など、景観を売りにしている地域では減価要因になると思います。但し、その減価も鉄塔などの存在により、俗にいうインスタ映えに悪影響がある場合は大きくなりますが、展望台などからの風景の一部で、その鉄塔などの存在がわかる程度であれば、減価の発生はないと考えられます。
馬毛島の不動産鑑定評価
自衛隊基地建設候補地として国が購入した馬毛島ですが、9月11日、固定資産税の評価基準となる標準地の鑑定評価が実施されました。既に固定資産税の評価替えの鑑定評価作業は終了してるところが殆どだと思いますが、今回はかなりぎりぎりの調査だと思います。
調査は不動産鑑定士2人と市の税務課・財産管理課の職員8人にて実施、民有地2地点、公有地(旧馬毛島小中学校跡地)1地点の調査を行ったそうです。通常、公的評価は地価公示のみ1地点につき2人の不動産鑑定士が鑑定評価を実施しますが、今回の馬毛島の固定資産標準地評価は2名での調査、慎重に行う必要があったからでしょうか。
ちなみに気になる鑑定評価額ですが、自衛隊用地は官地ですので非課税となりますが、民地の変動率はどうなるでしょうか?固定資産税の税額に影響する変動率、とても興味深いところです。
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