Archive for the ‘鑑定評価の話’ Category
不動産鑑定評価額を決定する要因
先日、ネット記事で「お金持ちは不動産を物件ではなく街で選ぶ」と書かれた方がいました。
ここでいう物件は不動産の個別性(土地なら主に方位や規模などの画地条件、建物なら構造・品等・施工の質、築年等)、街は不動産の地域性(駅距離、前面道路幅員、住環境等)の違いが価格の差となって現れることになります。
その地域に鉄道駅ができる、道路が拡幅される、など将来その地域の発展が確実な場合、将来性も価格形成要因となることがありますが、将来性は地域性に含まれることになります。
土地は永続性がありますが、建物は年月が経つと老朽化に伴う価値の下落は避けられず価格は下がることになります。また、土地も、人口減などによる地域の衰退により需要が減ると、価格は下がることになります。このような点から、資産性の高い不動産を購入するためには個別性ではなく地域性を重視する必要があります。
「不動産にお買い得はない」とはよく言われますが、住宅地域であれば利便性、居住性、商業地域であれば収益性に優れた不動産は価格も高くなっています。不動産をお探しの方は、一度、いくつか見て住みたい街にある不動産に順番を付けた後、それぞれの価格を調べてみることを勧めします。その順番はおそらく一致していると思います。
グリーンランドの鑑定評価額
先日、アメリカのトランプ大統領がデンマークからグリーンランドを購入希望、とのニュースが流れました。持ち主のデンマークは売却を拒否しておりこの話は実現しないと考えられます。
グリーンランド売買の話は、今回が初めてではなく、1946年にやはりアメリカが約1億ドル(現在の価値で約13億ドル、日本円で約1400億円)での購入を提示したことがあるそうです。
このような広大な領土の売買は、過去実際に行われたことがあり、例えば、
1.1803年、アメリカがフランスからルイジアナを1500万ドル(現在の価値で約3億4000万ドル)で購入
2.1867年、アメリカがロシアからアラスカを720万ドル(現在の価値で約1億2500満ドル)で購入
があります。
もし、グリーンランドの売買が実現したとした場合、価格はどれくらいになるでしょうか?鑑定評価を行うとした場合、いまだかってない難しい評価になると思います。ちなみに、ワシントン・ポスト紙は、売買価格は2億ドルから1兆7000憶ドルの間と分析しています。相当幅がありますが、グリーンランドの価格を予想するのはそれくらい難しいことだと理解できます。
約180坪の土地の鑑定評価
少し前ですが、女優の三田佳子さんの自宅が6年前、売りに出されたとの記事がありました。広さは約180坪、新築時約10億円と言われた不動産は6年前で売値6億円、そこから3億5000万円まで値下げされ、平成26年8月に不動産投資会社が購入、その後転売されたそうです。
実際、この土地は5画地に分割されて販売されたそうですが、不動産の鑑定評価を行う場合は、
1.取引事例比較法を適用し、画地規模などの類似性の高い取引事例から比準し、比準価格を求める。
2.収益還元法を適用し、想定建物から求められた純収益を還元利回りで還元して、収益価格を求める。
3.開発法を適用し、開発想定図面(一体利用又は分割利用)をもとに求められた①販売総額から②造成費・建築費及び③付帯費用を控除した価格を求める(①~③は価格時点に割り戻した額)。
を求めることになります。
鑑定評価額ですが、特に今回の土地は開発業者が区画割での分譲を目的として購入しており、3.の開発法による価格を重視して価格が決定されることになります。
画地の規模は、180坪÷5画地≒36坪、戸建分譲地とのことですが価格は約8000万円~1億2000万円だそうです。やはり東京の不動産価格は高いですね。
鑑定評価額と競売落札価格の関係
先日、古代エジプトのツタンカーメン王の頭像が474万6250ポンド(約6億4400万円)で落札されたとのニュースがありました。盗品の可能性がありますが、競売に出品され落札されました。
この競売ですが、インターネットオークションと同じ原理で最も高い価格を提示した人が購入権を獲得するもので、その価格が落札価格になります。鑑定評価額も同じ考え方で価格が決定され、簡単に言うと、その不動産を最も有効仕様できる人が市場で最も高い価格を提示することができる、その価格が鑑定評価額になるというものです。
ただし、競売評価人が行う競売の鑑定評価は、競売の開始価格(最低入札価格)を決めるものであり、鑑定評価額と落札価格とは必ずしも一致することありせん。現在は売却基準価格、落札価格とのホームページで見ることができるので、競売に興味のある方は、その価格差を調べてみるとよいかもしれません。
公共のごみ置き場と不動産鑑定評価額
不動産の価格は、隣地やその周辺に嫌悪施設があると下がることはよく言われますが、公共のごみ置き場も嫌悪施設にあたると考えられます。特に、自治会の規約(自治会員の同意が必要、等)であったり、ワイヤーや杭で固定されていて動かすことが困難な場合などは、鑑定評価額も下がると判断されます。先日、ネットニュースに、100万円払って他の家の前に移動をお願いする、との記事がありました。可能か否かは別として、資産価値で100万円以上の増加になれば、やる意味はあるかもしれません。
嫌悪施設ではありませんが、家の前に電柱やバス停がある場合、嫌な人はお金を払ってでも移動して欲しいと思うかもしれません。かなり昔、テレビで家の駐車場の前に電柱があり、駐車に困難している人が出ていました。ちなみに電力会社に交渉したところ、移設に当時の価格で30万円かかると言われ断念したと言っていました。
バス停はバス会社との交渉次第で移動可能とのことでしたが、実際、動かしたケースはあるのでしょうか?
最後に、携帯電話の基地局が減価要因になるか、と相談を受けたことがありますが、難しい判断になると思います。基地局との距離や高さ、地域(純粋な住宅地域か否か)などから判断することになると思います。
中古マンション価格と築年の関係
中古マンションの鑑定評価を行う場合、原価法、取引事例比較法及び収益還元法を用いて価格を求めることになります。この中でも原価法は、まず、土地と建物の再調達原価(新たに同じ土地建物を調達する場合の原価)を求め、その価格に減価修正(耐用年数に基づく方法と観察減価法)を行って積算価格を求めることになります。
先日、ネット記事に中古マンション価格と築年との関係が出ていました。内容は、
1.築5年程度:新築価格の10%減くらい(売り急ぎ等条件によっては20%程度減)
2.築5年~10年:平均で25%減くらい(築12年を超えると35年住宅ローンを組めなくなるので人気が高いそうです。)
3.築10年以降:かなり割安になる。
築20年で平均40%減、築30年で平均60%減
だそうです。
以前、不動産業者さんが築5年程度の戸建住宅は新築との比較で割安感がなく、売りにくいと言っていましたが、中古マンションも同じですね。
あと、「中古マンションは管理を買う」との言葉もあり、築年数だけでは価格は決まりませんし、対象不動産ごとの管理や修繕・維持の状態(鑑定評価だと観察原価法を用いて減価額と求めることになります。)も価格に影響を与えるので、上記の数字は一般的な目安なのかな、思います。
平成30年地価調査について
先週の18日、国土交通省は平成30年基準地価を発表しました。住宅地、商業地、工業地などを合わせた全用途の全国平均が前年(0・3%下落)より0・1%上がり、1991年以来27年ぶりに上昇に転じました。インバウンドによる訪日客の増加や再開発による利便性等の向上が理由と考えられます。
このような訪日客を受け入れるホテル建築ラッシュが都市部で続いていますが、札幌、仙台、広島、福岡の4市の商業地は9.2%上昇しました。観光地としての魅力に加えて、まだ価格に割安感があり、伸びしろが大きいこともあるのではないでしょうか。
私が住んでいる愛知県名古屋市でも、今年は上昇率1位地点が名古屋駅地区から栄地区(「中(県)5-12」(錦2丁目))になりました。回遊性のある商業地域としての魅力と伸びしろに加えて、買い物以外に楽しむスポットが多いことも訪日客に好まれたのではと思います。
名駅地区と栄地区の今後ですが、リニア新幹線効果や再開発が進む名駅地区が優位だと考えられます。
ですが、栄地区において圧倒的な訪日客を呼び込む施設建築や施策などを打ち出した場合、最高価格地点が逆転する可能性は残されているのではと思います。
大手スーパー西友の適正価格
現在売却が噂される大手スーパー西友の売却価格についての記事を見ました。業界内では3000億円~5000億円と言われています。かなり幅がありますね。
このような小売企業の価値は、店舗の不動産価格か、企業が将来生み出すと期待されるキャッシュフローの総和を比較して大きい方を取ることが多いそうです。不動産鑑定評価基準の収益還元法・DCF法に似た手法で試算するのでしょうか。
ちなみに西友の自社物件の土地の路線価価格は約280億円、0.8で割り戻して350億円と試算されました。
2000億円でも高い、との声がある一方、西友には1800億円の長期借入金があるとのこと、3000億円という数字はこの点を考慮した価格と言われています。
西友が実際に売却された場合、その価格はいくらになるのか、興味深いところです。
アパホテルと収益還元法
先日、アパホテルの元谷芙美子さんが書かれた「不動産は買いたい時に買ってはいけない」という記事を読みました。今期の経常利益率が30%強とのこと、同族会社であることも理由でしょうが、ものすごい利益率ですね。
現在は超低金利であり、これから上がろうとする今が投資のタイミング、不動産はタイミングを買うのが重要だと書かれています。ホテル経営をファンドとして捉えるなら、金利が安ければ全額借り入れて返済しても家賃収入が多くなる。アジアの主要都市と比較しても東京の地価、特に都心の超一等地の地価は安いとのことです。
東京など大都市の地価は、金融緩和の影響で上昇を続け、バブルの傾向が見られるとの意見が出始めました。アパホテルのような世界から日本をみるという視点をもつと、地価の安い今、積極的な投資行動に出る時期だと判断されるのだと思います。
元谷社長は日本の不動産の価格のことを書かれていますが、元谷社長は今までの日本の主要な評価方法である原価法(不動産の再調達原価にて評価する方法)ではなく、収益還元法(不動産の収益性を重視して評価する方法)を重視して判断されていると思います。元谷社長は、バブル期、収益還元法による価格が世界の4.5倍割高になっており、一気に撤退したそうです。
収益還元法、不動産鑑定評価基準には、「~なお、市場における土地の取引価格の上昇が著しいときは、その価格と収益価格との乖離が増大するものであるので、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として、この手法が活用されるべきである。」と書かれています。もちろん、ホテルのような投資物件は収益還元法を重視して価格決定がなされるべきですが、利回りインデックス等が整備されていない日本では、原価法も勘案しながら価格を決めることが多いです。適正な鑑定評価を行うためにも、国が主導して投資利回り等のインデックスの整備をして欲しいと思います。
アインシュタインの手紙の落札額
相対性理論などで有名な物理学者アインシュタインの手紙8通がオークションにて計20万9400ドル(約2330万円)で落札されました。英字でタイプされたものですが、一部に手書きの文字や署名が添えられており、そのことが手紙の価値を上げたと考えれられます。
テレビ番組などで、有名人の使用したものの鑑定結果をみていると署名がある場合、鑑定額が一気に上がる印象があります。
タイプで打たれた手紙と一緒で、署名があるとその人のものと証明できることも理由と考えられます。
それにしても手紙8通で約2330万円の価格がつくアインシュタイン、すごい人だったんですね。
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